クトゥルーライブサークル:マスカレイドについて

私たちマスカレイドのLARPイベントの特徴は、「多人数による群像劇スタイル」「現代ホラー(クトゥルフ)の世界観」「非接触戦闘」というスタイルをとることです。これは、他のファンタジーLARP団体の提供するイベントとはだいぶ毛色が変わっています。どうしてこういった内容になってきたのか、そしてどうなっていきたいのかを書いてみたいと思います。

マスカレイド発足の経緯

マスカイレドのコアメンバーの一人である私(天藍蒼穹)が「LARPをやってみよう」と思ったのは、クトゥルフ神話TRPGのページをめくっていて「Cthulhu Live(未訳)」という記述をみたことがきっかけでした。

これを海外から輸入して翻訳して遊ぶには、10人以上が集まって、運営側にも何人か協力者が必要で、場所も必要という条件をクリアしなければいけません。これはなかなか厳しい条件です。例えば、ボードゲームTRPGコンベンションは全員が同じシステムでずっと遊ぶには興味が違うことが多いし、個人的な知り合いを相手に実施するには必要とされるプレイヤー人数が多すぎました。

もともと、自分は大学時代の先輩から海外のLARPのことはきいていて、40人向けのライブRPGやLARPを大学時代に実施していた事もあり、場所と人数が集まる環境があればできそうだという気はしていました。

これを可能にしたのが、秋葉原にある卓ゲー部とその店長でした。この場所には、TRPGオンリーコンなどをはじめとして、意欲的な試みを柔軟に受け入れてくれる店長と、様々な趣味の人がゆるくつながるいい人間関係がありました。

この環境の下、2015年7月には、最初のクトゥルーライブ2版を使ったイベント「秘密のオークション」を卓ゲー部の知り合い向けに初めて実施しました。

このイベントが成功したと感じたのは、その参加者から「次は運営側をやってみたい」と言われるようになったからです。当時「TRPGプレイヤーは身体を使ったロールプレイはできないし恥ずかしがるから、とてもLARPなんてできない」といった友人は、結局は最初のGMの1人になってくれました。

私たちはそれ以降、秋葉原卓ゲー部にきて遊んだ人同士が面白かったよ、といってくれた事から、サークルではなくTRPGオンリーコンベンションのような形として単発イベント開催をしていくことになりました。

この頃は、いくつものファンタジーを中心としたLARPサークルが立ち上がってきていました。これは、見た目からLARPの魅力を分かりやすく発信できるのがファンタジー方面だったという事にも関係していると思いますが、CLOSSさんなどの熱心な普及活動のおかげといえるでしょう。

一方で企業としてLARPをイベントの1つとしてとりいれたオバケンさんを除くと、佐賀のカバルさん、Math-Gameさんが結成されるまで、現代ホラージャンルを中心に打ち出すのイベントやサークルはありませんでした。

こうした中で、2017年9月にマスカレイドというサークルとして再スタートを切ることにしました。

マスカレイドの特徴

マスカレイドは、サークルという体裁をとっていますが、サークルメンバーがイベント運営スタッフだというような意味合いで、サークル参加した人むけにLARPを実施するという方式をとっていません。これは、前述したように秋葉原卓ゲー部の知り合いやゆるい繋がりの方に自由に来てもらいたいと思ったからです。

私たちは、クトゥルーライブというルールを使ってイベントを行なっている事で、他のファンタジーLARP団体とは大きく違うコンセプトを持つ事になりました。それが、「多人数による群像劇スタイル」「現代ホラー(クトゥルフ)の世界観」「非接触戦闘」という特徴です。

多人数群像劇というのは、主人公を決めず、誰もが探索者である一方、一人一人が活躍できるかどうかというのは状況によるというものです。この群像劇というスタイルは今のところ扱いが非常に難しく、TRPGや日本のコンピュータRPGをプレイしてきた感覚とはかなり異なる環境です。

クトゥルフの世界観についてはここでは触れませんが、TRPGとしては大変有名なシステムになっていて、この世界観であるために、群像劇的なスタイルがうまく機能することもあります。

私たちの非接触戦闘というのは、ターン制で、じゃんけんの手を基本にした仕組みです。これによって、戦闘時に銃を扱うことができたり、よりロールプレイしやすい戦闘を、安全に起こしたりすることができます。

さて、どんどんファンタジーLARPが広がる中でマスカレイドは「ファンタジーや演技戦闘とは違うLARPもあるのになぁ」と思いながらも、自分達特有の弱点を思い返しては、ファンタジーLARPの方が広まるのは仕方がないかとも思っていました。

というのも、クトゥルーライブというルールは、残念ながら2018年現在、日本語版の出版は予定されていません。
現在私たちが使っているのは、 Skirmisher Games社が、クトゥルフ神話TRPGのLARPバージョンとして出版したルール「Cthulhu Live 3rd edition」です。これは、クトゥルフ神話TRPGの版権元であるケイオシアムから「公式」とお墨付きがついています。日本ではそういった公式の認定を受ける機会はありませんが、とりあえず、クトゥルフのLARPルールとしては最大手といっていいでしょう。しかし、それでも日本語版がないというのは広まりにくいものです。

このルールの希少さの問題と、私たちが特段普及をするというよりは楽しくあそんでいるという環境もあって、ファンタジーLARPが急速に拡大する中でひっそりとやっているという状態が続いていました。
その一方TRPGとしてのクトゥルフ神話はオンラインを中心に人気を博し続けていて、もっと楽しんでもらえる可能性があるのではと思うようになってきました。

マスカレイドが目指すもの

私たちマスカレイドは、LARPという言葉が知られていく中で、「クトゥルフ」で「非接触戦闘」という世界も知ってもらいたいという気持ちを持つようになってきました。

LARPというジャンルには、クトゥルフ神話TRPGで遊んでいる多くの人たちにもほとんど地続きといっていいほど似たルールで遊べるLARPがあるということをもっと知ってほしい。普段着に近い格好で体験しやすく、TRPGの探索者のように狂気に打ち震え、それぞれの後ろ暗い秘密を持ったり、誰も触れてはいけない石版を眺めて異世界の様子を読み解いていくという経験をしてもらえないだろうかと考えています。

特に、TRPGはゲームスペースを借りたりコンベンションのようにリアルに会って遊んだりする事もある中、「クトゥルフ」のジャンルは動画を見て楽しむ人もいれば、オンラインセッションを通じて手軽に遊ぶ人も多く、比較的オンラインでも自由にできる環境が揃っています。そうした中で、オフでしかできないLARPは、ゲームスペースをはじめ色々な場所に実際に行くという事に意味がでてくるイベントだと思います。

マスカレイドのイベントをきっかけに、これからTRPGプレイヤーがもっと気軽にLARPに触れるきっかけになってほしい。その体験が、新しいTRPGの世界を開いたり、既にTRPGで面白いものをLARPでも実施できたりといった交流がもっと起きてほしいと思っています。

これからのイベントでそういった繋ぎ目や新しい扉になっていけないか、というのが私たちの希望です。